高校になっても、俺とリンの距離は変わらなかった。
相変わらず片時も(授業に時は違うけど。。。)離れることもなく
飽きることもせず、あの距離は保たれていた。


だから、なんとなく思った。


「なぁ、リン?」
「ん?」

「人の勝手に飲むな。」
「いいじゃん、一口くれたって‥ケチ。」

まったく。と思いながらいつの間にか取られたバナナ牛乳を取り上げる。

「で、どうしたの?」
「あ。そうだ。。。
 リンは好きな人できないの?」

「?」
「四六時中俺と一緒なわけジャン?
 ・・・それでいいのかなぁ。。。って思いまして?」

リンは不思議そうな瞳で俺を暫し見ていた。
なんか…そんな目で見られるとドキドキするんですけど、なに?

「…バカね〜ぇ」
「な!!」

「恋する乙女がワケもなく男の子と一緒に居るワケないじゃない」
「・・・ってコトは?」



・・・もしかして。




「リンがここに居るのは、その人が居るからなのよ〜?おバカさんねぇ」





あら?・・・なんだろう?
何か、今頭殴られたみたいに…ショック受けてるのは何故?

あれ?マジで?





「マジマジですよ?」
「!!(読まれた!)」

ニマニマと楽しそうに笑うリンの顔。
いつも見ているその笑みが今は違って見える。

そんな奴が居るなんて…知らない。

知らなかった。
ずっと、一緒だったのに

この隣に居る距離がいつか自分のモノじゃなくなるなんて
・・・思ってみなかった。
考えても、みなかった。








あぁ、聞くんじゃなった。

【end】
純情少年奮闘記。(笑)

増えるようだったら、また分裂?



***



耳元できゃんきゃんわめくリンの声を知らないフリで決め込んだ。



冷蔵庫に残っていた新作アイス。
アイスはカイト兄の私物と決まっているのだが…
ソレはカイト兄のじゃないのを俺は、知っていたんだ。
元はカイト兄が買ってきて、ソレをリンがもらってた。。。


別に俺もアイスが欲しかったわけじゃない。
ただ・・・何となく、無性に?腹が立ったから。

アイスをもらってるリンが
あんまりにも嬉しそうにするから


・・・だから、食べた。


それが、先ほどリンにばれて・・・この状況に至るわけです。
わめき疲れて、暫しうな垂れるリンを横目で見ながら
・・・ふつふつ罪悪感が突き刺さり始める頃
ぽそっとリンが呟いた。



「折角、楽しみにしてたのに。。。」
「・・・悪かったって」

「カイト兄にどれだけお願いしたと思ってるの!!」
「・・・知らない。(そんなにしてなかったジャン。)」

「レンと食べたかったのにぃ」
「え?・・・一緒に食べるつもりだったの、か?」

「・・・だったの。だから、おねだりしたの。なのに、なのにぃ〜ぃ////」



いつの間にか大きな瞳からは涙がぽろぽろ零れ落ちて
・・・もう、罪悪感どころの話じゃない!!


「あぁ・・・ご、ごめん」
「謝ったってもう遅いの///」

「ご、ごめん・・・」
「〜〜〜っ」


何百回でも謝るから・・・
何でもするから・・・

そんなに、泣かないでくれよ!!
もう、そんなコトしないから!!

本当に、ごめんってばぁ!!




ソレなのに内心は、笑っている自分が居る。
やっぱり、君の一番は・・・俺なんだね?

【end】
・・・この子たちは何をやっても可愛いですよね?



***



最近の私の、困りごと。

「りんちゃん、りんちゃ〜んvv」

それは、このちっちゃい生き物。。。

一応・・・私の片割れの、鏡音レンなのだが
本来は、普通のツンデレンに属しているのに
…今は、可愛げ溢れるショタレンになっているのが


・・・私のとてつもない、困りごとなのである。。。


みんなは順応性豊かと言うか・・・なんと言うか?
とてつもなく簡単にこの可愛い生き物を受け入れている状態で。。。
この状況に混乱しているのは、どうやら私だけらしい。。。


ソレもソレで、どうなのかなぁ??


やたらと私にへばりつくこの可愛い生き物から
兎に角、逃げて隠れて、逃げまくる!!!
それが今できる唯一の回避方法だったのだが

先ほどマスターと新曲の合わせをしていたところを、敢え無く捕まった。。。


「チョット!!今、マスターと新曲の合わせしてるの!!」
「だって、リンちゃんずっとどこにも居ないんだもん!!!・・・もう離さない。。。」


ぎゅっとしがみついてくるこのちっちゃい生き物は
どこにそんな力があるのか聞きたくなるほどの力でしがみついて来る



「仕方ないなぁ・・・また今度にしとくか?」
「えぇ!!マスター!!」

「しゃないよ。。。今のレン、こんなだし?」
「〜〜〜〜っ///。」

「はい、終了」と言ってマスターはパソコンの電源を落してしまう。。。
本当に、私の逃げ場がなくなってゆく・・・。

いつものレンは、恐ろしいくらいに聞き分けがいい子だ。
私のワガママすら2つ返事で答えてくれるくらいだし・・・





でも、私はこの可愛い生き物から逃げたいんですってばぁ。。。





「あ!私今日、買い物当番だ!!
 行って来なきゃ!!・・・ね?」

そう言って私はしがみつくレンを見る。。。
ものすっごく不服そうな顔をして私を見上げてくる

その瞳に少なからず罪悪感は感じるのだが・・・



「あ。リンちゃん
 今日の買出し僕が行って来るから」
「え?カイト兄?!」

「だから、今日はリンちゃんずっとレン君と一緒に遊んでってあげて大丈夫だよ〜」
「たまにはいいんじゃない?レンのこと甘やかしてあげたら?」

「ミク姉、メイコ姉!!!」



みんな揃って、何を言ってるんですか!!!…ちょ、本気!!!



「わ〜ぁいvvvリンちゃんと一緒vv」



体全体でその嬉しさを表現してるんだねぇ。。。
嬉しそうに万歳始めてるし・・・もぅ。。。///











そんな感じで・・・夕飯まで、お暇をもらって
ニコニコと嬉しそうに笑って向かい合うレンに何をすればいいのかな?

「・・・えっと、何すればいいの?
 歌う?本読む?ロードローラーは…危ないっか?」

すると、レンは自分の手を出して



「僕にも塗って。リンちゃんと同じ色がイイv」



そう言えば、いつもお揃いで付けているネイルが
このちっちゃい生き物には塗られていない。。。
少し考えてから・・・


「じゃぁ、ミク姉呼んでくるね?」
「ヤダ!!(即答)」

立ち上がってこのままついでに逃げてしまおうと思ってみたが
・・・またがしっとしがみ付かれる



「えぇ・・・だって、私下手だもん///」



ソレは、レンのお墨つきだよ?
一生懸命塗っても「もっと、上達しろよ」とか文句ばかり。
・・・私だって一生懸命レンの為にがんばってるのに!!

「いいの!!リンちゃんがいいの」
「・・・。」

「いつも、リンちゃん僕の為に一生懸命塗ってくれるでしょ?
 だから・・・僕は、リンちゃんがいいのv」


えへへ〜vと嬉しそうに笑うちっちゃくて可愛い生き物



・・・いつもの、レンはそんなこと一言も言ってくれないのになぁ。。。



私は、いつもよりも2回りも小さい手をとり
小物入れからネイルを取り出した。
小さな爪に私と同じ色のネイルをゆっくり乗せる



あんまり期待しないでね?
そんなにキラキラして目で見ないで欲しいな。。。

一生懸命塗るから
窮屈なのは少し我慢していてね?

【end】
・・・あえて「レン」呼んでいない。
私、がんばった(笑)



***



「レン君、レン君」

「ん?どうかした?」

「りん、レン君が帰ってくるまで
 ちゃんといい子で待ってるから・・・
 がんばって新しいお歌、歌ってきてね?」
「あぁ。。。それ?
 また今度になったんだ。」

「ほんと!?」
「うんvだから、今日はずっとりんと一緒に居られるよ〜
 何して遊ぼうか?何がしたい?」

「えっとね〜ぇvえっとね〜ぇvvりん、レン君と一緒にお歌うた〜う」
「じゃ、そうしよう(可愛いなぁ。。。)」



***



外野。

そんなリビングの空気から逃れるように
マスターの部屋の中には人口密度が高かった。

「マスター今日はレン君の新曲調教だったんじゃないんですか?」
「ん〜流れた〜ぁ」
「あれれ?あんなにレン君楽しみにしてたのに?」

何枚かある楽譜を見比べてから


「・・・だって、レンが今日はヤダ!!って言ってきたんだ。」


たまには、かまってやろうと折角徹夜で
選んでみた楽譜はまったく意味がなくなり・・・
空いてしまった時間を埋めるべく
また別の楽譜に目を通す。。。


「マスター振られたのよねぇ。。。」
「メイコさん、うるさいです・・・。」


可哀想にね〜ぇ。っと笑いながら
メイコはよしよしと子供を慰めるように
彼の頭をなでると・・・ムッとした面持ちで
顔を染めて恥ずかしそうにしながらも
その手を払うことはなかった。。。


「「えぇ!!」」
「歌うことより今のリンと遊びたいんだって。。。まったく。
 だから、カイトとミク。」


不意に名前を呼ばれた2人は不思議そうに首をかしげる
そんな2人に徐に見ていて歌詞を差し出して

「このカバー歌う?」
「「え?」」

「時間あるし・・・調教してみる?」
どうする?と聞かれれば
2人の答えは、勿論決まっている



歌うために生まれてきました。
アナタの為に歌うために


・・・私達は、生まれてきたんです。


その日にぎやかなこの家にはいつまでも楽しげな歌が響いていたそうです。



【end】
もしかして、メイマスかも知れない事実浮上(笑)



***



・・・あ、リンのあの顔は
何か欲しいものがあるときの顔だ。



どっか上の空で唇に人差し指をあてるあのしぐさ。

絶対ねだり直前の顔。
今日は何だ?
大抵、何か食べたい。に収められるけど・・・
ケーキか?クレープ?アイス?今日は一体何をねだる気だ?

一応財布には余裕を持たせてつもりだけど。。。
物にはよるんだよなぁ…



「ねぇ、レン?」
「ん?」



『はいはい、何が食べたい?甘いものですか?お姫様?』



「今日はなんだか、すっぱいものが食べたいの」
「・・・はいはい、じゃぁ・・・え?
 甘いものじゃなくて?」

「うん。すっぱいものv柑橘系が食べたいv」
「・・・柑橘系?」

「グレープフルーツたまには食べたいなぁ。。。」




へらっと笑う彼女
もう、何でも叶えて差し上げたい。。。けど????



「・・・チョット待て。」
「・・・うん?」



不思議そうにしているリンを置いて
(それでも視界に入っている位置内)携帯を取り出した。

「もしもし、メイコ姉。聞いていい?」
『何?デート中でしょ?どうしたの?改まって??』



そうそう、今は楽しいデート中の筈なんですが
・・・チョットした、思い当たる節がありまして。。。



「女の子がすっぱい物食べたいときってどんな時?
 グレープフルーツとか言ってます(こそ)」
「・・・ソレは、あんた。。。」



徐にためるメイコ姉さんの一言は
異常に時を長く感じさせた。



「妊娠よ!!(笑)」
「・・・マジで!!(焦)」

しかし、その3秒後。

「まぁリンの場合は本当に食べたいだけでしょうけどね?」
「・・・はぁ。。。ですかね?」

「心あたりあるわけですかねぇ?レン君は?」
「・・・イエイエ、メッソウモゴザイマセン。」

慌てて携帯を切ると・・・深くため息を吐く。
安心からくるものか?はたまた、帰ったからの気苦労か?

とりあえず戻ろうと
君を見上げた


大事そうにお腹を抱えて微笑む彼女に
・・・まずは、なんて声をかけるべきなんでしょうかねぇ?


【end】



20.10.15


***


「あのさぁ」

「・・・なによ?私、忙しいんだから。。。」

そう言って台所を占領しては
なにやら生クリームと格闘中の相方。
オコボレ。と言う名の残飯処理は最近日常化になりつつある今日のこのごろ。。。

徐に言葉を投げかけた。

「俺さぁ」
「ん?」

生クリームと一時休戦なのか?
今度は小麦粉を篩い始めながら俺の言葉に相方は耳だけ傾ける。


「甘いの・・あんま好きじゃないんだけど?」


知ってた?と聞けば相方はかなり驚いたらしくて
篩っていた小麦粉を落しかける。。。
まぁ、寸前のところで止めたので台所が粉塵爆破する恐れはなくなった。。。

「だから、あんま甘くしないでよ?」
「・・・べ、別にレンの為に作ってるんじゃないもん!!
 カイト兄と食べるんだもん!!カイト兄は甘いの好きなんだから!!!」

そう言って相方はこっちに背を向ける。。。
やれやれ。と思いながら俺は席を立つ




   今度アレができればまた呼ばれるんだ。
   最初の頃に比べれば今のなんて全然いい出来なのに

   ・・・どうせ、あげないくせに
    まぁ、別にどうでもいいけど。。。




そう思いながら、相方が作った皿の上の
マフィンを取って部屋を後にする。

背中でドアを閉めながら
口にまだ暖かいマフィンを押し込む


「ん。・・・バナナ、旨い。」


あぁ、他人の好みより
俺の好みをもっと解って欲しいなぁ。。。
むしろ、俺好みになって欲しいんですけど・・・ね?(もう、なってるけどね?)














「そっか、甘いのあんまり好きじゃないのか。。。」
この時相方が、今度から甘さを軽減させることにしようと思っているのは…

まだ、知らないけどね?

【end】


20.11.8