不意に、耳に付いた音に指を止める。

青く点滅する画面から目を背け
その姿を視界に入れた。
何だろう?

この、感じは?







【もしも。】







「“リン”」

その、名を呼んだ。
それと同時に音は止み
彼女は振り返る。
蜂蜜色の自分とは質の違う髪がふわりと揺れ、スカートが靡く


「・・・あ。お仕事終わったの?LEN」


元いた場所からこちらへと歩みよりと言いかけてくる
彼女はこの世界に残った唯一の人間。
存在してはいけないはずの存在。


けれど、彼女はここで生きている。
生かしているにのは他ならぬ


自分なのだが・・・



「どうかしたの、LEN?」



名を呼ばれてからも何の反応も見せなかったコトに
彼女は、不思議そう首をかしげてはリボンが揺れる
密かに、出会った頃のメモリーを読み込んだ。
あの頃はこんなにも豊な表情ではなく

ただ向けられるのは恐怖と不安
そして、憎しみしかなかった。





「LEN?本当にどうしたの??大丈夫??」





遠慮がちに掴まれ服が引かれる。
心配そうに見つける瞳にはまっすぐに自分だけが写りこむ
ころころ変わる表情はと仕草は自分とっては不要なモノ。なのに
彼女を観察すればするほど・・・




それは、ひどく『羨ましい』思い始めている自分が存在しているのも確かにあった




だから、不意に伸ばした
リンの頭に手を置き、撫でる。という行為をとる


できるだけ優しく
できるだけゆっくり


「別に、問題ない。」


単調だがそんな言葉を伝えると
リンは少し様子を窺うようにこちらを見たが

「そう、ならいいけど・・・」

っと、くすぐったそうにしながらも
照れたように嬉しそうに笑った。


感情は持たない
感覚もないこの自分が
不意に感じるこの一時の感覚は何だろう?

遠く、それはあまりにも遠すぎる昔に
それでも、確かに感じていたモノ。なにだろうか?



そんなことを考えながらも
自分が一時中断していたすぐに仕事を終了し
状況を元の状態へと戻す。

そんな一連の作業をリンは不思議そうに見つめていた。



「そろそろ、戻る時間だ。。」
「ふぇ?そうなの?
 ん〜もうちょっと遊びたかったなぁ。。。」



施設内は環境がすべてが規定通りに
設定された空間であるため、人間は時間間隔を麻痺しやすく
その環境設定プログラムはすべてが自分に設定されていた。

それが誰がそうしたのか?
何かの理由があるのか?はメモリーには残っておらず
ただ、あの後目が覚めた後にはすでにそうプログラムされていた。



「また、迷子になりたいのか?」
「い、いや!!それは絶対に嫌です!!!」



フルフルと激しく首を横に振りしがみつくように背中にへばりついてきた。
数度逃げ出しては怖い思いをしてのが骨身にしみて解って居るらしく
そのことを思い出すと数時間はこの状態が続く。。。
しかし、これでは身動きは取れない。
無理やりに外すこともできるのだが・・・
喚き散らすためそれは、辞めることにしていた。


「リン」
「・・・やらぁ////」

「手。」
「てぇ?」

「じゃないと動けない。」


そう言って背中にへばりつくリンに見えるように自分の手を振って見せる
すると、少しだけ気を向けてれたらしくそっとこちらに目を向ける



「・・・つないで、いいの?」
「じゃないとココから動けない。」



暫く背中の方から唸るような声が響いたいたが
しがみ付いていた腕からは次第に緩くなり
差し出した手に、温もりが宿る。。。





   36.5°の体温
   人間の平均的な体温





朽ちない体に変え
すべてを破棄し、排除した
この世界で一体だれが何を求めた結果のだろ?

煩わしいと感じていたすべてを捨てて
歩きだしてきた自分たちが
手放してきたモノすべてを



   彼女はまだ、持っている。



ただそれを、離さないように。離れないように。
きつく握りしめた。
すると、リンは一度こちらに目を向ける。
それに気付かないふりを決め込み歩み続けると・・・
リンはくすくすと声を小さく笑ってから、口を開いた


そこからこぼれてきたのは“言葉”ではなく“音の配列”


音と言葉にリズムを組み合わせて
できるに奇怪な音の配列に
また、古いメモリーに何かが、触れる。

興味深げに視線を向けると
リンはそれに気がつきこちらに視線を向けながら
楽しそうに微笑んで見せた。
すぐにセンターにアクセスし音声を認識をとると
音と言葉からデータを検索をかけてみるコトと
音楽データはすぐにヒットして
楽譜のデータはを見つけ出した。




『子供向けの童謡。』というジャンルらしく
並べる音の配列を昔同じように繰り返したことがある。
そんな、気がした

それを『歌』と呼んでいた。あの頃。




単調なその曲に合わせるように口を開いた。

・・・が、出て音はあまりにもずさんな音で
出した自分でさえも若干、驚いた
それ以上に驚いては足を止めジッと見つめてくる視線。。。


興味本位で意味のないことをするべきではないということは、初めて理解し学習した。


「・・・LENって、まさかの音痴?なの??」
「俺には音声機能はあっても、歌唱機能ではない。それだけだ。」



リンと居るようになってからは
確かに、言葉を使う数が急激に増えた。
今までは他のプログラムとは通信を取れば済むことだった
その為この音声機能も利用する意味はさえなかった
ましてや“歌う”だけの機能の必要性などあるわけもなく
破棄してしまった機能の、1つだった。



そう、伝えて再び歩き出そうとするが。。。

リンの足は一向に動かない
その場に踏み留まったままで
無理やり引き寄せようようかとも思ったが。。。
しばし、歩みを止めたままリンは考え込むように
俯いた後で、期待に満ちた眼差しを向けられた



「でも、話すことはできるから
 頑張れば歌えるってことだよね?」



・・・若干話が解っていない。



「・・・だから。。。」
コトの問題を正しく訂正しようと思った直後
リンは俺の手を引き、強くこう言った。





「私が教えてあげるよ!!!」





・・・話が、完全にずれ始めた。
旧人類が目を閉じたくなる理由が理解した気がする。。。
それは、現実から逃げたくなる現れ何かも知れない・・・っと。


「リン。。。」
「大丈夫、リンにぃちゃんより歌上手いから!!」
ココに来て、いつもの標準基準があげられる。
リンの口にする基準はいつも自分か。それとも“兄” か。


兎にも角にも・・・任せて!と
いきこんでやる気になってしまっている。。。

こうなるとリンは一向に引かない癖がある
気質は、気が弱く大人しいのだが・・・
一度決めるとその命さえ投げ出そうとする。
初めて出会った時それを深く理解した

それが、初めて持った“興味”という原因の引き金だった。




嬉々として喜ぶリンを見て
このまま好きにさせてもいいだろう。と
後に回しにしていた仕事を全て大人しく放棄することした。


不意に、リンが軽く手を引く。

何も感じないはずなのに
じんわりと手のひらに伝わる温もり
徐に、目を向けるとリンの視線と絡む。

にこにこと嬉しそうに笑みを浮かべて



「リン、LENの声好きなんだ
 だから、もし・・・一緒に歌えたら嬉しいな?」



それはまるで花が綻ぶ瞬間のようで

もし。。。などそんな仮定などが
存在する筈など無いのに





もし、今俺に“歌唱機能”が合ったとしたら
リンはもっと一緒に歌っていてくれるのだろうか?

もし、今俺に“体温”が合ったしたら
リンはもっと手を繋いでいてくれるのだろうか?









もし、今俺に“感情”があったとしたら。。。
リンはもっと笑って居てくれるのだろうか?









それは、ありもしない仮定の話。
君の歌声にただ“懐かしい”と思ってしまった


ただ、それだけで
いつか訪れる終末まで


今ここにある何一つ変わらないであればいい。。。






【end】
妄想、乙!!!って感じですみません。。。
これもすべては自分が生きるためのことだったんですよwww

本当にいろいろすみません。。。
挿絵を担当してくださった天鈴さんはしんりょがとても愛してる方でwww
数少ない一縷萌キュン仲間さんで記念日を知って
無茶ぶり的に「ヤラナイカ?」って誘ってみたところお忙しいのに引きうけてくださいましたwwwありがたい!!!